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• 細川忠興軍功記
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1. 太閤様御代蒲生飛騨守氏郷へ会津百萬石被下候前廉ハ伊勢之津にて十二萬石御取候由申 候氏郷御死去被成御跡目御息藤三郎秀行殿へ被遺候然る處に御家中二ツに成渡八右衛門 方蒲生四郎兵衛方と申大公事出来仕候八右衛門方藤三郎殿御心入御座候并家康公も御同 前に思召候四郎兵衛ハ石田治部少取持申候下にて埒明不申に付達上聞候て渡八右衛門に 切腹被仰付候四郎兵衛儀公事ハ勝申候得共五畿内にハ被召置間敷と被仰出候に付肥後へ 下加藤主計頭清正殿へ被召置候事

1. 藤三郎殿家中之出入にて埒明不申ふかいなしと思召候間会津ハ被召上下野之内宇都宮 に拾八萬計明地有之候彼所へ可参候旨被仰出宇都宮へ御引越被成藤三郎殿家康公之婿殿にて御座候

1. 慶長三年夏時分景勝に会津百萬石被下候越後國ハ堀久太郎秀政殿へ被下候久太郎殿初ハ 越前北の庄に御座候其跡へハ青木紀伊守殿被遺候事

1. 秀頼様御傳守にて前田肥前利勝殿御座被成候御後見ハ加賀大納言利家殿被成候得と被仰付候事

1. 太閤様慶長三年六月七日之頃より御煩被成御本復被成間敷と上下申候事

1. 御遺言に秀頼様十五に御成候迄ハ家康公御名代御頼被成候と被仰置候事

1. 同年八月十八日に太閤様御他界被成候秀頼公六之御年にて御座候同年九月秀頼公伏見より大阪へ御下被成候御供には加賀大納言殿肥後殿片桐市正且元此衆御座船に御乗之由 之事
   v御遺言に拾人之御年寄衆を御定被成萬事之御仕置御談合にて被仰付候様被仰置候由 及承候事

   前田肥前殿忠興様へ被成御出御口上

   石田治部少大納言殿へ申候ハ家康儀早我儘申御寄合場へ切々出不申候今之分に被召置候 ハヽ以来秀頼様御為悪敷成可申候間只今御打果被成可然と色々申に付大納言殿尤に思召 御打果可被成とて大坂より伏見へ御上り被成候是程之儀を知らせ不申候ハヽ以後に御う らみ可有と思召様體語申候打果申手立治部少申候ハ家康屋敷落くほに候向之高き宇喜 田屋敷より火につ焼立候ハヽ下々騒出可申候表へ出候ハヽ宇喜田屋敷より打取可申候裏 へ出候ハヽ我等か者に打取と可申候兼て加様に存候故内府屋敷之後我等下屋敷に仕候只 今佐和山より引寄申人数四千有之手間入事にて無之と申候と肥前殿御申候忠興様被仰 候ハ打果候儀ハ治部少手立に及申間敷候扨是ハ何と御分別参左様に思召候哉と忠興様被 仰候得ハ肥前殿御色替り申候忠興公被仰候ハ縁者と思召一大事知せ候と御後悔に見へ申 候此儀ハ破に可被成と無事に可被成も御父子の御分別にて済申候破に成申時ハ御身上私 のかれ度存候ても人のかし不申候又此方之身上御のかれ度とも人のかし不申候破に極り 候得ハ何時も一所と可有御心得候私存候ハ治部少め日本にこわきと存人ハ両人御座候 壹人之内府大納言殿ハ煩て病にて御果其以後ハ己か主に可成とて色々様々申候近頃難申 候へ共大納言殿御死去候ハヽ貴殿儀今之十分一も人用申間敷候御分別専に候以来内府を 主に可被召か治部少を主に可被召か私ハ治部少主に用申儀不罷成候と被仰候得ハ肥前殿 一々承届至極仕候然ハ大納言殿御異見可被哉と被仰候得ハ連々如御存知我々か申儀ハ能 事も承引不申候益此儀は治部少申通尤と思入候を我等か口無調法にてハ中々申ほどく事 成間敷候是非御同道可被成と達て被仰候に付大納言殿へ被成御出候大納言殿御座候又 次之間迄御出候て是よりハ肥前殿御入被成様體可被仰候得ハ大納言殿むくと起上り畳をた ヽき悪口被仰候肥前殿被仰候ハ私口不調法にて物のあや不申分に付御合点不参候然故 越中殿是迄同道仕候と被仰候得ハ然ハ越中殿御出候得と被仰候に付大納言殿御座候間に 御入被成様體共被仰候得ハ其方之被仰候事候得ハ何之御談合にも不出候とゆひ折を被成 此分にてハ以来秀頼之御為に不成候我か息之通ふ内に家康打果可申候と存候被仰候忠 興様被仰候ハ近頃難申候得共御分別一重に参候と奉存候又家康御談合の場へ被出儀堅無 用と申儀も可有御座候家康御如在御座有間敷候貴殿御合点参候ハヽ家康被出候様に可仕 候如何可有御座と被仰候得ハ家康さへ被出候ハヽ何と申事無之候常々に無意趣候と大納 言殿被仰せ候に付頓て家康公を大納言殿へ御同道被成入魂之御盃御取替被成首尾能家康公 御帰被成候忠興公ハ御残にて大納言殿へ被仰候ハ家康家輔無用心に御座候間向島へ移申 度と被仰候得ハ此上ハ如何様共其方へ任せ申と被仰候に付即剋向島へ御移被成候此一ケ 條ハ三斎様御物語承申候扨家康公御老中御連判之御禮状之御文體に當家續申内ハ今度之 御恩賞忘れ申間敷と御座候て六七人之御連判状私預り申に付覚申候

1. 家康公大納言殿和合被成に付大納言殿と被仰候加藤肥後守清正殿浅野紀伊守幸長殿黒 田解守長政殿加藤左馬嘉明殿肥前殿御父子三人忠興公此御衆向島へ御心付御同道故治 部少叶不申候其内に大納言殿御遠行被成候事

1. 今度之様體治部少仕業にて御座候間治部少御打果被成候半と右之衆仰合候折節治部 少大阪へ下り申に付何れも大阪へ御下り被成候得ハ治部少宇喜田殿屋敷に居申候則肥前 殿御屋敷隣にて御座候故肥前殿屋敷迄御詰懸被成候に付治部少女乗物に乗摂津國之地 を忍ひ上り伏見我屋敷へ引籠申候此屋敷御城西の丸へ近く御座候其上城同前之要害にて 御座候故何も思召様に成不申御ためらい被成候事

1. 治部少一身の御衆を手わけ仕右之御衆之屋敷へ仕懸申す由に付銘々に屋敷御囲ひ被成候忠 興様御屋敷落ちくほに御座候内之方より塀に詰橋をかけ奇手御待被成候事

1. 加藤肥後殿より并河志摩齋藤伊豆利宗両人御使に被遺被仰候ハ御屋敷落窪御座候京橋ハ 要害能御座候京橋へ御つほみ被成候ハヽ肥後殿黒田殿忠興様御三人にて御かため被成候 ハヽ何程にて仕懸申共不苦候急き御つほみ被成候へと被仰進候忠興様御返事に仕懸申と 申候得共物色も見不申是にて働不成ハ仕のきに可参と御返事被成候事

1. 忠興公御屋敷へ治部少方仕掛け申沙汰之時森美作忠政殿被仰候ハ信長様方此方御二代之 御傍輩其上御屋敷も裏合にて御座候間御一所に被仰合御働可被成と被仰御屋敷御囲被成 候就夫忠興公御知音之御衆金森出雲殿平野遠江殿氏家志摩殿津田興庵此衆ハ忠興公御 屋敷せはく御座候とて美作殿御屋敷御詰被成候由隼人左馬允物語仕候事

1. 家康公右之御衆へ被仰候ハ治部少世間仕候故各御腹立被成候治部少佐和山へ引足させ可 申候是にて腹を御入可被成と被仰候何とも御請（詰カ）に御為悪敷治部少と存彼方此方 仕候如何様とも御分別次第と被仰せ付て治部少佐和山へ御引込せ可被成ハ是より伏見大 阪静り申候事

1. 景勝も終に会津へ入國不被仕候故御暇申入國之仕懸（遂カ）候事

1. 肥前殿大納言殿御遠行以後國江無御下に付御暇被仰上加賀へ御下被成候事

1. 忠興公も御暇被仰上丹後へ被成御下候事

1. 治部少佐和山へ下仕置ハ不仕武具之用意仕候と申合頓て打手上り申と家康公へ治部少申 に付肥前殿押越前衆に被仰付木目に番所立申候由之事

1. 忠興様ハ丹波衆へ被仰付御上り被成候ハヽ押可申旨に御座候事

1. 其節幽齋様大坂に御座候玄蕃殿松井殿米田助右衛門殿此三人も大坂に御座候與市（郎） 様伏見之御屋敷に御座候事

1. 家康公幽齋様被召被仰候ハ不眞思召候得共越中謀叛仕間敷との誓紙被成候へ然者玄蕃松 井米田なとも誓紙可被仰付旨幽齋様へ勅に被仰候幽齋様御請に越中ハ左様之悪心持者に て無御座候御心安可被思召候誓紙之儀即刻可被差上と被仰幽齋様並三人之誓紙上り申候 事

1. 忠興様は丹後より御理被仰上頓て相済無程大坂へ御上り被成候事

1. 忠興様大阪へ御着被成候て家康公被仰出候者向後肥前殿と御縁者振舞被成間敷と御誓紙被 成候様にと被仰出御誓紙上り申候肥前殿へも御同前に被仰出誓紙上り申候由之事

1. 忠興様より御理被仰上御光さま十五之御年江戸へ御證人に御下被成候頃ハ慶長五年正月 の末大坂御立被成候事

1. 肥前殿より御母儀を御下被成候由之事

1. 慶長五年三月初頃家康公被仰出候者越中殿連々御すりきり候様に被聞召候為指儀も無之 候得共豊後に六萬石之明所御座候大坂之台所に入被進め候間請取に人御下被成候様と被仰 出に（候）付松井殿有吉四郎右衛門殿其外に御鉄炮頭留澤市正御馬廻りに魚住右衛門兵衛 河北留平松田七右衛門桑原才蔵早水孫兵衛可児清左衛門岡本源三郎此衆杵築へ御下被成 候事

1. 忠興様ハ同月廿日時分に大坂より丹後へ御下候て四月初丹後御発足被成御下着候黒田如 水豊前中津に御入候故使者被遣候頓て御領分御廻り被成候佐田迄如水御出候へ御談合被 成度儀御座候と被仰遺候其内かれよりも御使者にて早船を被進候事

1. 土佐之長曾我部盛親殿より御使者にて見事成早船被遺（進カ）候事

1. 六萬石御領分御廻被成候杵築へ御帰城之前日如水佐田へ御出候て御振舞被成候其晩者 御領分山鹿之郷大庄屋太郎右衛門所に御泊り被成候其元之御仕置河北藤平に被仰付候事

1. 忠興様杵築へ同廿五六日之頃御帰城被成候大坂より玄蕃殿助右衛門殿御両人より言上之 文箱同廿八日に杵築に参着仕候景勝引別心に相極り御名代家康公御自分之御人数被召連 景勝御ふみつふし可被候大坂より之御先手ハ福島左衛門大夫殿加藤左馬殿忠興公此三 人を可被遺旨被仰出候間早々御上り被成候得と言上に付明る廿九日に杵築御出船にて五 月五日大坂へ御上着被成即刻御登城被遊候彌右之通被仰渡御陣御用意被成候事

1. 六月初に大坂より丹後へ御下被成家康公大坂へ御出陣之日限御聞合六月廿三日與一郎様 御人数被召連宮津御出陣被成忠興様ハおまん様以之外御煩に付御様體可被成御見届と て御逗留被成同廿七日に御出陣被成候其夜ハ若狭西津と申所に御着被成中一日之御滞留 にて御歯之御養生被成候事

1. 同廿九日之晩ハ江州今津と申浦より夜船に召明る日出に浅妻に御待被成候事

1. 忠興様七月一日之朝日出に朝妻を御発足被成其晩は濃州御影寺と申在郷に御陣取被成 候御人数ハ郷戸に陣取被申候事

1. 明る七月二日之昼ハ濃州宇類間の待ちにて御休被成候町はつれ船渡にて向ハ犬山之城より 少川上へ船着申候御人数川向に立御渡を御待被申候向後ハ左様に不仕御先へ押申候へと 被仰に付夫より御人数御先へ押申候事

1. 忠興様ハ其晩とだと申宿にに被成御陣明る三日にハ御崇と申宿にて御機嫌悪成與市郎様と 御中違ひ被成候事

1. 七月九日之晩ハ信州望月に被成御陣成候仙石越前殿御領分にて御馳走被成明る十日之昼ハ岩村田にて御息豊前殿へ右（古カ）宅より御出候て御振舞被成候其晩は山中之宿に御陣 被成候事

1. 同十二日之昼高崎にて井伊兵部直政殿御振舞被成御手廻り御供衆迄御振舞にて御座候 其晩ハ志はと申宿に被成御陣候

1. 明る十三日之晩ハ太田と申宿榊原式部大輔殿御領分に付御馳走被成候十四日に御手廻り 無人にて館林へ被成御見廻候御先に津田興庵居合被申御取持にて緩々と御慰被成候式部 大輔殿より御馬を被遺候御供衆不残御振舞にて御馳走被成候事

1. 明る十五日之晩太田へ被成御帰十六日之朝太田を御発足にて其晩ハ宇都宮より二里程北 へ在郷に被成御陣候那須野之原に野陣諸勢御待請被成に付野陣之振體玄蕃殿助右衛門殿 被仰渡小屋掛之用意仕申候

1. 同十七日之晩に大坂より小笠原少齋稲留伊賀守より飛脚下申候石田治部少廻文にて 上方一面になり家康公を御敵に成し申候丹後へハ丹波衆但馬衆両國之衆指遺候御上様御 人質に大坂之御城に御上り被成候へと昨日八日に御使立申候御上様へ申上候得者中々御 上り被成間敷と被仰候御屋敷御留守之儀御気遺被成間敷と少齋自筆にて言上被申候彌慥 に思召御満足被成候と常々忠興様被仰候を度々承申候言上之状日付七月九日にて御座候 事

1. 右之一左右に付森三左衛門と申者丹後御使被遺候に付御書之御認様も見届申候又三左衛門 関所にて留置身之廻穿鑿可仕候其時御書之隠様なと御教成候事

1. 明る十八日に秀忠様江戸より宇都宮へ被成御着候忠興様御目見に宇都宮被成御出候町口 より五六丁程被成御出加藤左馬殿と御一所に御座候秀忠公御覧に付御時宜御座候て御通 被成土井大炊頭利勝殿被仰付御光様を早越中殿へ御対面被成候様にと御諚に付て大炊殿 御光様之御手を引御同道にて御対面被成候此様體住江甚兵衛牧五郎物語仕候

1. 明る十九日にハ小山へ家康公被成御着候付御目見御座候處に大坂より上方之様體中心之 飛脚参着仕候に付て御談合被成早森美作忠政殿者十九日之晩に川中島へ御帰陣被成候事

1. 明る廿日に御談合窮り被仰渡候者何も清須（洲）へ御集候て宮より桑名へ被成御渡海桑名 踏破伊賀を通り大和へ押出大坂表へ御詰寄可被成候家康公引付御馬出可被成候会津之押 にハ秀忠様宇都宮に御座被成申候何も御上り可被成と被仰出被得其意候事

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